今月のトピックス
「貨幣状湿疹と自家感作性皮膚炎」
【要約】
虫刺され・細菌感染症等が元で下腿にコイン状の湿疹ができるのを貨幣状湿疹と言います。貨幣状湿疹が長く続くと突然全身に強い痒みのある湿疹がたくさん出来ます。これを自家感作性皮膚炎といいます。これは貨幣状湿疹に対する二次的なアレルギー性皮膚炎です。下腿に何かできたらすぐに皮膚科専門医に受診される事をお勧めします。
1)はじめに
 貨幣状湿疹とは下腿の伸側の皮膚にコインぐらいの大きさの丸い湿疹ができるものを言います。元は虫刺されだったり、細菌感染だったりしますが、いつの間にか湿疹化し円形の湿疹が下腿に数個〜10個ぐらい出現します。この状態が2〜3週間続いた後全身に細かい紅い丘疹と紅斑が出現しひどい痒みが出てきます。この状態を自家感作性皮膚炎といいます。
2)貨幣状湿疹
 コイン位の大きさの円形の湿疹が下腿の伸側や、稀に前腕伸側・手指背等にもできます。中央部は湿潤性紅斑(濡れた感じの紅斑)で周辺部に漿液性丘疹(1〜2mm位のドーム状に隆起した皮疹で頂部に点状の小水疱がある)が並んでいます。痒みがありいつも掻いている人が多いようです。元は虫刺されだったり感染症だったりしますが原因がはっきりしない人も多いようです。ただ最初は紅い斑点が数個ありそれを掻いているうちに貨幣状湿疹となります。
3)自家感作性皮膚炎
 貨幣状湿疹を治療してもなかなか治らない状態が2〜3週間続くとある日突然全身に紅い小丘疹と紅斑がたくさん出てきて非常に痒くなります。この状態を自家感作性皮膚炎といいます。この皮疹を撤布疹とかid反応とか表現しますが原因論からこの状態を言い換えればこれは一種のアレルギー性皮膚炎です。原発巣(この場合貨幣状湿疹)の変性した皮膚蛋白や細菌成分・毒素等がアレルゲンとなって広範囲のアレルギー反応を起こすと考えられます。従って「急性アレルギー性皮膚炎」という診断名を用いても何ら差し支えはないと思います。実は私も「急性アレルギー性皮膚炎」という診断名を使う事があります。ただ貨幣状湿疹と自家感作性皮膚炎の一連の病状の変化は特徴のあるものですので、はっきりした一連の病状の進行があれば「貨幣状湿疹・自家感作性皮膚炎」という病名の方がわかりやすいと思います。皮疹は左右対称で四肢・体幹・顔に多くみられ、四肢末端・頭部には少ないという特徴があります。
4)治療法
 治療法としては他の湿疹等と同じでステロイド・非ステロイド外用剤と抗アレルギー剤・抗ヒスタミン剤の内服です。原発巣を中心に治療します。ただしかなりひどい状態が長く続きますので他の湿疹よりも強めの治療が必要です。場合によってはステロイドの内服もやむを得ない場合があります。他に抗アレルギー剤・抗ヒスタミン剤の注射も必要な場合があります。また細菌感染症を併発している場合には抗生剤の内服・外用を併用する場合もあります。
5)経過
 貨幣状湿疹がかなり長く経ってからあるいは自家感作性皮膚炎が起こってしまってから受診される方がみえます。このような場合はなかなか良くならず時間がかかります。数ヶ月〜半年位かかることもあります。という訳で貨幣状湿疹だけの段階(自家感作性皮膚炎を未だ起こしてない段階)のそれも早期のうちに受診することをお勧めします。下腿の皮膚に何かできたらすぐに受診して下さい。