第15話 手の話 H19.12.1

紅葉が始まったと思えば初雪の知らせが入り、年々四季の混在が進む傾向です。そういえば今年はまだ街路が銀杏の黄色で明るくなるのに驚いたり、落ち葉を踏みしめる喜びも味わっていません。でもこの夏から毎日朝通勤時に30分歩いて通うことにしました。往復時間、手を大きく振り背筋を伸ばし大きな歩幅で歩きます。腰痛の改善にと思って始めたのですが、最近話題のメタボリックシンドロームにもおおいに関与しています。体脂肪の消費率が高いのです。まだヶ月しかたっていないので数値に効果は出ていないのですが、腰の痛みはなくなりました。仕事がら朝から夜まで腰掛けて運動不足の典型でした。歩き始めて15分くらいで体が温かくなります。30分たつと汗をかきます。日頃冷や汗こそ毎度のこと、今まで忘れていた汗をかく気持ちよさに感動です。その上速足で歩きながら街の風景をみると、八百屋の野菜の表情も読み取れ花がいつ咲くか、みかんの実がいつなるのか、犬とも眼が合い、いつも出会う同じように歩いている人ともそれとなく確認しあい朝から多くの楽しみを見出します。

  朝晩冷えてきました。歩いていると手だけは冷たくなります。ポケットに手を突っ込むのは危険ですので最初は手袋をはめます。それだけでとてもあたたかです。もっと寒くなると別ですが今はしばらくすると手に汗をかくので手袋が邪魔になります。

  寒い日が続くと診療所には体のかゆみを訴える人や、手あれの人の受診が増えます。家事をする人の手は大気の乾燥に加えお湯を使い洗剤を使うので皮脂がどんどん減り、かさかさの皮膚になり所々に深いひび割れができています。小さな子どもは発汗異常から水ぶくれ、皮膚めくれ、乾燥皮膚で悲惨な指先で受診されます。治療には保湿クリームやステロイド外用剤を塗布しますが、一番大切なのは安静を保つことです。しかしこれが一番難しい。家事をしないわけにはいかないのです。


カテドラル
フランソワ・オーギュスト・ルネ・ロダン

  本当に手はいろいろなことをしてくれます。私たちの体の先端でありとあらゆる感覚をつかい私たちを守ってくれるのです。痛覚・温覚・触覚・圧覚は体のどの部位より発達し眼を閉じても何に触っているかその物質を解明してくれます。そしてその感覚は身体的なものを超えて乳児なら母親の手のぬくもりを皮膚に覚え、男女の間では手をつなぐことでお互いを認識しあい、触れられることに特別な感情をまじえ、精神的な意味を表現するまでになります。祈りにも舞踊にも手は特別な動きをします。楽器の演奏にはその鍛錬で私たちに至上の喜びを与えてくれます。絵画でも彫刻でも神の手が作り出すと思える傑作の数々を生み出します。ある評論でその芸術を生み出す『手を賞賛』してやまないと、芸術は手がつむぎだすかのように述べられています。

  人と話すとき顔をみながら手の動きを見てとります。言葉を補って語る手の動きを自然に見る私たち。その手が荒れてひび割れなどしていたら悲しいですね。これから冬手のお手入れにはげみ、自分の大切な分身の手をいたわらなくては。